• 田口房国

国産材自給率50%!!とか、もう言わなくていいんじゃない?


 林野庁の調査ではH30年度の製材用材の自給率は48.9%。合板用材、その他用材、しいたけ原木、燃料材を合わせて計算すると、自給率は49.76%!木材業界諸君!ついに我々は(ほぼ)50%の自給率を達成したのだ!!・・・ただし、「パルプ・チップ用材」を入れなければ、の話である。

もう少し数字を詳しく見てみる。








 チップ・パルプ用材の自給率は15.9%。これも量が多くなければ気にならないかもしれないが、チップ・パルプ用材の総需要量は3200万m3と、製材用材を超えて部門としては一番量の多い部門だ。総量として、1000万m3を国産材に切り替えないと自給率50%に届かない。

では、その「自給率劣等生」のチップ・パルプ用材の今後の計画を林野庁がどう考えているか、というのが次の表で分かる。





 H26年度に対しH37(R7)年度はどの分野も軒並み150%〜200%の目標を掲げているのに対し、パルプ・チップ分野に関しては120%、500万m3を600万m3にしましょうという、いかにも消極的な数値だ。一番パイの多く、一番自給率が低いのに、一番手つかずのままにしている。嘘でもいいから、もっと見栄えの良い数字を書けなかったのだろうか。謎だ。



 ただ、実際私はパルプ材を伸ばす必要があるとは思わない。そもそも私たちがよく使っているコピー用紙などの「白い紙」は広葉樹から作られる。日本に多い針葉樹から作られるのはダンボールや封筒などの「茶色い紙」だ。だから無理やりパルプ用材を国産材化しようとすると、日本中の広葉樹を伐らなければならない。広葉樹は萌芽するものも多いから再植林のコストは抑えられるかもしれないが、伐採の労働強度や不揃いな木材の運搬コスト増を考えると、限られた林業作業員をそちらに振り替えることは得策とは思えない。それに、所詮パルプ用材はいわゆる低質材で、そこがいくら伸びようとも林業従事者の労働環境や生活環境が改善する気もしない。だから林野庁が、そもそもパルプ材は伸ばせないし伸ばす意味がない、と考えているのなら、それはそれで理解できる。ならばこの際、パルプ材の自給率はそれ以外のものと切り離してほしい。



 ちなみに、木材以外の分野の自給率がどのようになっているか、ちょっと見てみる。

・食料・・・37%(H30、カロリーベース)

・水産物・・・37%(H30、カロリーベース)

・衣類・・・38%(H29、カロリーベース)

 これらの指標には生産額ベースの自給率もあったが、木材に関して生産額ベースでの数値を見つけられなかったし、木材でいうところの材積は、他分野のカロリーベースに近いものがあると思ったので、こちらの数値を出してみた。木材も関わりの深い「衣食住」で調べてみたが、どれも計ったかのように、37〜38%だ。まさか・・・と思い改めて見てみると、木材も全体の自給率は36.6%だ!これは偶然の一致なのだろうか?謎だ。うがった見方をすると、「木材は50%いきました!」などと言ってしまうと、他の衣食住分野、第1次産業分野に優先的に予算が振り分けられるため、みんな牽制し合いながら横一線になっているのではないだろうか、とかさえ勘繰りたくなる。50%達成できた、というのはもしかしたら不都合な事実なのだろうか(笑)



 ともあれ、よくテレビなどで「安い外材に押されて、国産材が一向に使われなくなってしまった」というようなよくある文言は、家を建てる建材でさえそのほとんどは外材であると一般の人に思わせるミスリードだと思う。いや、一般の人だけならまだしも、木材業界の人間だってそう思っている人は少なくないはずだ。しかしここではっきり言っておかなければいけないのは、製材品としてはマーケットの半分は国産材になっているということ。(ただし、集成用ラミナ材なども含まれていると思うが)。こうなるまでに、製材業界は、価格、供給体制、品質などの面で努力もしてきたはずだし、そのことに大いに胸を張って良いと思う。無論、ここで安住する必要はないが、これ以上のシェアを取ろうとすると、なかなか大変だ。外材による製材品の多くが、ラミナや下地材など低価格帯の物だとすると、より安い仕事をしなければいけなくなる。当然平均単価は今よりも低くなる。シャアを取りたいためにわざわざそんな茨の道を行く必要があるのだろうか。それは各企業の経営方針次第だが。



 視点を変えてみる。例えば車業界を見てみると、国内の新車販売における国産車の割合は約90%だ。その車業界はトヨタ、日産、ホンダ、マツダ、スズキなどをはじめとした限られたメーカーに独占されている。そしてそれぞれの会社は海外の会社と資本提携もしている。そこまでしないと90%という高い国産割合は維持できないのであろう。木材業界も突き進んだ先にはそのような未来が待っているのだろうか、また、望むのだろうか。



 何度も書いたが、パルプ材を除けば国産材は約50%という自給率をほぼ達成した。それは農産物、水産物、衣類の自給率と比べればはるかに高い自給率だ。それに胸を張るとともに、その事実を認識した上で、これからどうしていくかを考えなくてはいけない。でないと、いつまでも「国産材が使ってもらえない」という卑屈な精神の元、「国産材自給率50%達成」という悲願を目の前にぶら下げられて、馬車馬のように死ぬまで走らされるのかもしれないのだから。


房国

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